歯ぎしりを治さず放置していると、最悪の場合に抜歯が必要になることをご存知でしょうか。
ただ歯ぎしりに限らず、悪習癖はいずれも無意識のうちに行なわれていることが多いです。自覚している方はまずいないでしょう。
それこそが、歯ぎしりの治療が難しい理由でもあります。
本記事では歯ぎしりを発見することの重要性や、起こりうる口の変化などについて解説します。

発見することの重要性

就寝中、無意識のうちに行なわれていることが多い「歯ぎしり」。自分自身で気付くことは難しく、第三者からの指摘で発覚するケースがほとんどです。
歯ぎしりは「ただ上下の歯を合わせてギリギリと動かしているだけ」ではありません。なんと通常の5~6倍の噛む力がかかっており、その力が70kgに及ぶ場合もあります。
これが毎日となると、果たして歯はどうなるでしょうか。
腕や足の骨は骨折しても数ヶ月でくっつきますが、歯は一度破折すると二度と元通りにできません。
割れた線が歯茎の下にまで続いた場合、口腔内の細菌が侵入して炎症を起こします。次第に症状が出始め、歯や歯茎に痛みが生じるようになるでしょう。

治療歯がダメになる可能性もある?

むし歯が進行すると、内部の神経が蝕まれて強い痛みが生じます。何もしていない平常時も痛むのが特徴です。
このような場合は抜髄(神経の除去)を行ない、上に冠を被せる処置をします。その際、歯の上に金属の土台(コア)を立てることがあるのですが、そのときに歯を多く削らなければなりません。ただでさえむし歯治療のために削った歯を、さらに削るとなると、健康な歯がほぼなくなってしまうでしょう。
そこに普段の何倍もの力がかかると、痛みが出るだけでなく破折のリスクが高まってしまいます。
歯ぎしりが、いかに歯の健康を損なうかわかっていただけたでしょうか。それを踏まえた上で読み進めてもらえれば幸いです。

歯ぎしりが起こるメカニズム

歯ぎしりが起こるメカニズムは、正直なところまだ解明されていません。
ただ現状わかっているのは、歯ぎしりの約9割が「浅い眠りのときに歯ぎしりが起こっている」という点です。

どのような口の変化が生じる?

寝ている間に毎晩強い力がかかり続けると、口の中にある変化が起こります。具体的にどう変わってくるのか、詳しく解説します。

1.歯がすり減って形状が変化する

歯がすり減ると、先端の形がまっすぐになる可能性があります。残念ながら、一度すり減った歯が元に戻ることはありません。経過観察をしても変わることはないので注意しましょう。

2.歯が根元から欠ける

強い力がかかると応力がかかって歯がたわみ、先端ではなく根元から折れる可能性があります。
神経が生きている場合は、風や冷たい水などの外的刺激によって知覚過敏が生じます。歯が染みて、食事の時間が苦痛になるでしょう。

3.詰め物や冠が外れる

詰め物や冠の位置によっては、力がかかることで外れる恐れがあります。中でも、保険診療で用いられる金属は要注意です。
万が一就寝中に外れた場合、誤飲の可能性もゼロとは言い切れません。深く削って治療していた場合は、歯科医院を受診するまで染みることもあるでしょう。

悪習癖に潜む恐ろしい症状とは?

これまで、歯ぎしりがもたらすリスクをいくつか紹介しました。いずれも歯の健康を損ねる内容ばかりですが、症状が出たらすぐに気付けるのが特徴です。
実はもう1つ、見た目でわかりにくい変化があります。それはズバリ「歯周病の進行」です。
歯周病は歯槽骨が徐々に蝕まれ、最終的に歯を失くす可能性がある病気です。そこに歯ぎしりの悪習癖が加わることで、進行をグッと早めてしまうのです。

若年層の方にはあまりなじみがないかもしれませんが、歯周病は日本人の8割程度が罹患しています。自覚症状が出にくいため、初期段階でまだ気付けていない方もいらっしゃるかもしれません。
歯周病の状態の歯に強い力がかかると、急速に症状が進行して歯槽骨が溶けていきます。

歯ぎしりが原因で歯周病を発症することはありません。しかし口腔状態が悪く、歯の表面に歯垢が付着していると、それが原因で歯周病を引き起こします。そこに悪習癖が加わると、危険な状態になるというわけです。
少しややこしい話ですが、勘違いしないよう気を付けましょう。

まとめ

悪習癖の一つである歯ぎしりは、歯を失うリスクのほか、病気の進行を早める可能性も秘めています。
残念ながら自覚症状がないので、いま現在も気付かぬまま歯をギリギリと合わせている方がいらっしゃるかもしれません。その状態を放置していると、健康な歯を失うことになります。
次回は適切な対処法や大切な歯を守る方法を紹介するので、ぜひ併せてご覧ください。

田島デンタルオフィス