今回も、前回に引き続き「歯ぎしり」をテーマにお話しします。
まずはタイプごとの特徴を紹介するので、自分に当てはまるものがないかどうかチェックしてみてください。

 

1. グライディングタイプ(歯ぎしり型)

上下の歯を、左右にギリギリと合わせるのが特徴です。
「歯ぎしり」と聞いて、まずこのタイプをイメージする方が多いのではないでしょうか。こすり合わせているときに大きな音が出るので、家族と一緒に寝ている場合は気付かれやすいかもしれません。
広範囲に顎を動かすため、上下の歯の先端が少しずつ全体的にすり減ります。すり減った分だけ噛み合わせが変化しますが、それを元通りの高さに治そうとすると、それなりの治療期間や費用が必要です。

2.クレンチングタイプ(噛みしめ型)

その名の通り、左右に動かすというよりはギュッと噛みしめるのが特徴です。音が出ることはあまりなく、長期間続けていると顎の骨が発達して徐々に膨張します。
場合によっては、噛みしめた痕が舌に残ることもあるでしょう。舌の横が、デコボコになっていないかチェックしてみてください。
ナッシングタイプ(軋ませ型)
特定の部分のみを強い力でこすり合わせるので、犬歯(前から数えて3番目の歯)付近の歯の先端がすり減りがちです。「軋ませている部分だけがすり減る」ということから、この呼び方になったようです。
上下の歯を合わせたときに、犬歯のあたりが不自然にピッタリと合います。歯の先端が欠けることもあるので、併せて注意が必要です。
3つのタイプを紹介しましたが、1種類だけの「単独型」と、複数のパターンを同時に行なう「混合型」とがあります。後者に該当する人は約3割と、意外と多い状況です。

適切な治療法と対策

前回もお伝えした通り、歯ぎしりは無意識のうちに行なわれるのが基本です。治療といっても、歯ぎしり自体をやめることは不可能に近いといってよいでしょう。
そこで、歯科医院の治療における考え方としては、次の2点を重要視しています。
・歯ぎしりから歯を守る
・歯を欠損しないよう予防する
具体的にどのような治療をしているのか、詳しく解説します。

歯を守る方法とは?

就寝時に「ナイトガード」と呼ばれるマウスピース装置をつけることで、衝撃から歯を保護できます。音が鳴らないため、家族の眠りを妨げる心配もありません。
既製品も流通していますが、患者さま一人ひとりの歯型にフィットするものを使用するのがベストです。歯科医院で相談すれば、型取りをしたのち作製してもらえるでしょう。
ナイトガードは、歯の代わりに装置が削れていく消耗品です。穴があいたり汚れたりしたときは、歯科医院で作り直してもらいましょう。
毎晩忘れずつけることが重要なので、ナイトガードを装着して寝ることを徹底してください。

歯を欠損しないためのポイント

前回、歯ぎしりの習慣がある人が歯周病に罹患していると、病気の進行が早まり抜歯の可能性が高まるとお話ししました。
歯ぎしり自体をやめられないとなれば、歯周病治療を早急に行なうほかありません。
歯茎の炎症が治まれば、歯に負荷がかかっても歯槽骨がすり減る心配はないでしょう。歯周病はいつ発症してもおかしくないので、現在は健康な人も要注意です。
では歯周病を防ぐには、どうすればよいのでしょうか?
「定期健診に通い、歯科クリーニングで歯石を取り除く」
という考えの方がいらっしゃるかもしれませんが、これは誤りです。
歯周病の原因は、歯の表面や周りに付着した歯垢です。歯石を除去したところで、歯垢が残っていると歯周病は発症・進行するのです。
まずは適切なブラッシング方法を習得し、口の中に歯垢を残さないことが重要です。それと同時に歯ぎしりの影響を最小限に留められれば、歯を欠損するリスクはかなり低くなるでしょう。
正しいブラッシング方法がわからないときは、歯科医院で相談しましょう。歯科衛生士が、歯ブラシの適切な動かし方や口腔ケアのポイントを教えてくれるはずです。

自宅でできる対策

これまで、歯科医院での対処法について説明しました。
実は道具や歯科医院に頼らなくとも、自宅でできる対策があります。
それはズバリ「眠り方に気を付ける」ということ。
歯ぎしりの詳しいメカニズムは解明されていないものの、眠りが浅いときに起こりやすいことはわかっています。次のポイントに気を付けながら、質がよい睡眠をとれるよう心がけましょう。

・就寝前はできるだけスマホを見ず、リラックスした状態で布団に入る
・適切な枕の高さにする(高すぎると歯を噛みしめやすいので要注意)
・横向きで眠ると、顎へ負担がかかりやすいので避けた方がよい
・規則正しい生活を心がけ、なるべく同じサイクルで寝たり起きたりする

まとめ

歯ぎしりを甘く見ていると、歯がすり減ったり歯周病が進行したりして欠損する恐れがあります。
やめることはできなくとも、ナイトガードなどを活用して衝撃を緩和させることは可能です。自覚がある方は、早めにかかりつけ医へ相談しましょう。
「自分は歯ぎしりをしているのかな」と不安に感じた方は、家族に相談してチェックしてもらうのがおすすめです。一人暮らしの方は、スマホの録音機能などを用いて確認してみましょう。

 

田島デンタルオフィス